佐藤呼吸器科医院 | 高崎市飯塚町の呼吸器内科

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アレルギー・免疫療法

アレルギー性鼻炎や気管支喘息の治療としてアレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量投与して免疫反応を抑制する中和抗体の産生を促す免疫療法(特異的減感作療法)は古くから行われてきました。その作用についてはさまざまな議論がなされてきましたが、最近対象を選べば有効性の高い治療法として再注目されるに至りました。アレルゲン免疫療法の特徴は一般の薬物療法はあくまでも症状を抑える対症療法なのに対して、アレルゲン免疫療法で一旦作用が出た場合、長期間(数年~10年以上)薬物治療が必要なくなる可能性がある点です。

アレルゲン免疫療法にはアレルゲンの投与法として二つの方法があります。

皮下免疫療法(減感作療法) SCIT(subcutaneous immunotherapy)

皮下免疫療法はアレルゲンを希釈した液を皮下に繰り返し注射して中和抗体を誘導する治療法で古くから行われてきました。昔は主に喘息の治療法として行われていましたが、十分な作用が得られる症例が少ないこと、重篤な副作用(喘息発作、アナフィラキシーショック等)があることなどから一時廃れてしまいました。その後スギ等の花粉アレルギーやペットアレルギー(日本では保険適用外)の治療法として再注目されています。
当院では主にスギ花粉症の治療として希望者に施行しています。

手順

  1. 血液検査でアレルギーの状況を検査。スギの抗体価が高値であること、他に重複するアレルギーがないことなど調べます。
  2. スクラッチテスト(少量のアレルゲンエキスを皮膚に垂らして皮膚を擦って皮膚の発赤腫脹を計測する検査)で実際にアレルギー反応が起きることを確認します。
  3. 皮下の感受性テストを行い皮下注射を開始する濃度を決定します。
  4. 実際にアレルゲンを投与しても皮膚の発赤や痒みが出ない程度の濃度(原液の10万倍〜1億倍くらい)に希釈した液から皮下注を繰り返して徐々にアレルギー反応が起こらない濃度をあげていきます。注射は週1〜2回で30回から60回くらいまでかかるので時間がかかります。
  5. 維持量まで増量できたら維持療法に入ります。維持療法は2週から4週間毎に1回維持量のアレルゲンを皮下注射します。維持療法は長く定期的に続けた方が作用が安定されるとされています。

長所・短所

  1. 古くからある治療法なので副作用や問題点が十分把握されています。
  2. アレルゲンを直接体内に投与するので強い副作用(アナフィラキシーや喘息症状)が出ることがまれにあります。
  3. 有効率はさまざまな報告があるが70%前後と言われている。有効な人は長期間続ければ続けるほど持続期間が長くなるとされています。
  4. 増量期は週1〜2回、維持期でも月1〜2回は病院を受診して注射をしなければならないのは大変だ。

舌下免疫療法 SLIT(sublingual immunotherapy)

最近(2014年)から日本でもスギの舌下免疫療法(以下SLITと略す)が始まりました。SLITもSCITと同様にアレルゲンを投与するのですが、やり方がだいぶ異なります。SLITでは患者さんが毎日アレルゲンの入った液を舌の下の口腔粘膜に自分で垂らして治療します。さらに2015年12月から新たにダニのSLIT療法も始まりました。こちらは錠剤を舌下に挿入することで治療ができます。ダニのSLITはまだ始まったばかりなので、ここでは主にスギのSLITについてご説明します。

スギのSLITの開始手順はSCITと大体似ています。

  1. 血液検査でアレルギーの状況を検査。スギの抗体価が高値であること、他に重複するアレルギーがないことなど調べます。
  2. スクラッチテスト(少量のアレルゲンエキスを皮膚に垂らして皮膚を擦って皮膚の発赤腫脹を計測する検査)で実際にアレルギー反応が起きることを確認します。
  3. 以上で問題ない場合治療の導入となります。導入時は3週間続けて受診する必要があります。
  4. まず初回受診で舌下投与の指導を行った上で、スギアレルゲンエキス(以下シダトレン®と略します)200JAU/mlのボトルを処方して、毎日決められた量の液を舌下に垂らして2分間保持、その後5分間は飲食禁止で1週間かけて増量していきます。
  5. 2週目は同じくシダトレン®2000JAU/ml(10倍の濃度)を処方し毎日決められた量を舌下投与して増量していきます。
  6. 3週目からは維持療法でアンプルに入った2000JAU/mlの液を毎日舌下投与していきます。

スギSLITの適応と禁忌となる患者さんは以下のような方です。

  • 主にスギのアレルギー性鼻炎、結膜炎がつらくて 毎日薬を使うような面倒な治療をしてでも症状の軽快を目指したい方。(治療作用はSCITと大体同程度の80%前後と言われます。全例に有効なわけではありません)※日本アレルギー学会・スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版)
  • 毎日できれば同じ時間に欠かさず服薬ができる方。(舌下投与は5~10分くらいはかかります。またその後30分くらいは激しい運動を避ける必要があります)
  • ペットのアレルギーやハウスダストのアレルギー、ハンノキやイネ科のアレルギーが合併していると治療作用が落ちる可能性が高いです。
  • 喘息のコントロールが不十分な場合、服薬時に喘息発作を誘発する危険があります。また食物アレルギーなどでアナフィラキシーを起こしたことのある方も危険です。
  • 抜歯などの歯科治療中の方、口内に外傷や潰瘍のできた方は治療を中止する必要があります。
  • 妊婦さんは治療開始はできませんが、治療中に妊娠しても治療は継続できます。授乳中も同様です。
  • 70歳以上の高齢者は免疫反応が弱くなっているので作用が落ちるとされていますが適応外ではありません。

スギSLITの開始時期

スギ花粉の飛散期は副作用が出やすいとされていますので、新規の処方が禁止されています。関東地方では6月から12月までが処方開始可能な時期で、1月から5月には新規の処方はできません。また検査の開始から導入終了までに最低1カ月はかかるので、ご希望の方は11月中に受診されることをご検討ください。

スギSLITの副作用

SLITはアレルゲンを体内に取り込む治療ですので治療中にさまざまなアレルギー症状が出ることがあります。主な副作用は口腔内や口唇、咽喉の腫れや違和感、痒み等で、鼻炎症状やじんま疹等の症状が出ることもあります。理論的にはアナフィラキシーも起こりえますが、現在までのところはアナフィラキシーは発生していないようです。副作用かなと思われる症状が出たときは速やかに主治医に連絡していただきたいと思います。軽い症状の場合は経過を見ることが多いですが、場合によっては治療の中止を考える場合もあります。